裁量権がない市長の判断は正しかったのか?
千葉港埠頭にある日石槽跡地4万2940平方メートルの敷地に24時間稼動の「産業廃棄物中間処理工場」の建設を計画した(株)パシフィック(以下原告)に対して千葉市が申請却下処分にしたため、これを不服とした原告が平成18年4月、千葉市長相手に「却下処分取り消し」を求める民事訴訟を起こした。これまで数回にわたり審理が行われたてきたが1月23日、裁判長の裁定で3月16日に双方の証人尋問を行うことが決まった。
これでいよいよ、新港の産廃処理施設の申請から却下までの経緯が法廷の場で明らかにされることになりそうだ。
千葉市長はそれ相当の理由で却下したと思われるが、産廃処理施設は環境大臣の所管であり知事・市町村長には裁量権はないと原告は主張している。この種の判例では原告が勝訴しているケースがあり、判決の行方が大いに注目される。
事前協議不成立の門前払いは適法か?
新港の産廃処理工場の建設計画について原告側は平成15年6月に千葉市に事前申請した。実は、この時点で千葉市が申請を拒否すれば問題は大きくならなかったのに、平成16年4月30日に千葉市はこれをいったん受理した形で原告に審査指示事項≠提示した。当然ながら原告は審査に必要な書類を準備しなければならなくなる。計画概要から設計図の作に至るまで多額の費用をかけて準備した。
その間、市役所担当職員と数回の折衝を図り、平成16年12月までに事前協議は事実上終了していたと原告は主張する。
ところが、この計画を知った新港地区の食品コンビナート連絡協議会や自治会連協から、成田空港へ燃料を送るパイプラインの石油貯蔵タンクがある特別警戒区域に産廃施設は危険と反対が起き、市議会でもこの問題が取り上げられた。
鶴岡市長は地域住民の反対の声を重視するとともに、建設計画内容に疑問があるとして平成17年3月25日に「事前協議不成立」と結論づけ、同28日に原告にその旨の文書を手渡した。
その後、原告は、なぜ審査に移行しないのかと執拗に異議を申し立て続けたので、千葉市は平成17年9月16日付で「申請却下」を郵送で原告に通知した。
しかし、原告側は納得せず「適法に進め、必要な手順を踏んでいる。設置許可しないのは違法」として、平成17年10月26日付けで改めて「産業廃棄物中間処理施設設置許可申請書」を千葉市長宛に提出した。
しかし、千葉市の担当職員は「新港に産廃施設は認めるわけにはいかない」と平成17年12月14日付けで、再度原告に「申請却下処分」の通知をしため、原告は平成18年4月4日、鶴岡千葉市長を相手どり「却下処分」の取り消しを求める訴訟を千葉地裁に起こした。
昨年12月まで数回の審理が行われ、答弁書を交し合っていたが1月23日、原告と被告に対して裁判長から次回から証人尋問を行うと告げられ、双方これを了承。3月16日午後1時30分から4時まで本格的に証人尋問が行われることになった。
証人尋問として出廷を要請されたのは原告と被告側は千葉市前担当職員と現担当職員の2名。一人につき約30分の尋問を行う予定。
【申請却下の根拠】
この裁判の一番の争点は千葉市が却下処分にした理由や根拠が問われる。
千葉市が却下した理由は「産廃処理施設を設置するための提出書類を審査した結果、設置を目的としたものと認め難い」とした上で「市の方針として新港地区に産廃処理施設を作らせるわけにはいかない」と原告に回答している。
しかし、原告はまず、「千葉市は申請してから、国の定める法的な手続きを踏んでいない」と指摘。却下処分理由の反論として「設置許可を求める申請をしているのに、門前払いをするのは納得できない」「却下処分を受けても、さらに設置許可の申請をしているのだから、誰が見ても設置する意思があることは明確だ」「千葉市の指導に従い、多額の費用を用いて設置許可取得に向けて準備してきた」と反論する一方、「申請してから縦覧・審査・告示等の業務手続きを怠った。産廃処理施設の裁量権は環境大臣の所管であり、知事や市長に裁量権はない」と主張している。
【原告小林剣司氏談】
新港には市のゴミ焼却場がある。なぜ民間はダメなのか。計画に多額の費用をかけさせて却下処分は納得できない。設置許可しなければ市にそれ相応の損害を請求する。反対した団体や自冶会の意見を重視したとなれば、過去の判例で請求の対象となるが本意ではない。反対した団体と和解する余地もある」と語った。
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