150,000部発行
2008年11月7日
通巻第146号
年間郵送購読料3,000円
稲毛新聞
 発行責任者/佐藤 正成  発行/(有)稲毛新聞社 〒263-0043千葉市稲毛区小仲台2-5-2 TEL043-256-4414(代)FAX043-256-4494
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星霜録
 ある60代の人が嘆き曰く「退職金の半分を金利の少ない貯蓄にして残り半分は少々リスクは覚悟の上で銀行に任せて投資信託に回した。なんと驚くなかれ、この1年間の株価の暴落で投資の1千万円が5百万円の半分になった」という▼銀行預金では利息が安い上、わずかの利息でも所得税がかかる。老後のために貯蓄を増やそうなんて今の金利ではとても不可能だ。だから、素人はつい銀行を信用して言われるがままに投資してしまう。世界経済の流れとはいえ、銀行に預金してお金が半減する恐ろしい時代になった▼前号でも触れたが、アメリカのサブプライムローンから始まった世界金融市場の危機。巨大資本支配のマネーゲームのしわ寄せが、せっせと蓄えた庶民のわずかな預金も一夜にして吹っ飛んでしまう。この不満を誰にぶつければ解決してくれるのか。否、誰も解決してくれない。すべて自己責任である▼日本の大手金融機関が破綻の危機に直面した時、公的資金(税金)を投入して救った。その結果、メガバンク(巨大銀行)が生まれ、破綻した日本の銀行や生保、証券会社は外資に吸収された。その巨大な外資も世界株価下落に左右され、破綻の危機に直面している▼この危機を打開しようと世界的に公的資金を導入して乗り越えようとしている。一時的にはこの巨大借金で凌ぐことができても、今の金融・経済システムではまた破綻する。こんな悪循環を脱却する新しい経済理論≠展開する学者はいないものか。(正)

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無信仰 亡国論 篤信富国を願って…(4)
人生は精神的な拠りどころが最重要
学校法人阿弥陀寺教育学園理事長 宇 野 弘 之

宇 野 弘 之氏
 その昔、釈尊の僧伽は、諸人が平等な思いやりに満ちた無差別社会であった。その当時の印度は、印度独特な封鎖的な身分階級、差別社会であり、出生によって社会的な身分や職業の一切まで、カーストの区分にて規定づけられて、特異な社会階級制度を構成していた。異なったカースト間の食事、通婚を禁じ、きわめて複雑で厳格な風習や戒律をもっていた。釈尊は、人は生まれによって差別的な扱いをされるのではなく、行いによって評価されるべきであると、僧伽の一員即ち仏教信者になれば身分の上下はなく、あらゆる人たちは平等であるとした。仏教徒になることを決定する根本条件、入門条件は「三帰依文」を唱えることにあった。
 絶対の帰順、まごころをささげる帰命、帰依が重要であり、すぐれた者に帰順し、よりすがる絶対の信、信仰「帰依三宝」が仏教徒を決定づける最小条件だった。
 仏・法・僧の三宝に、信心の誠をささげる。仏とその教えと教団(僧侶の集団)との三つの宝に帰依する。
 僧伽入門の時には、パーリ語で「仏に帰依したてまつる」「法に帰依したてまつる」「衆に帰依したてまつる」と三度唱え仏教徒として入門が許された。
 この事は今日でも重要な意味がある。三帰依文を口ずさむ、それは仏教徒や信仰者の基本姿勢である。
 「人身受け難し、今すでに受く。仏法聞き難し、今すでに聞く。この身今生に向かって度せずんば、さらに何れの生に於いてかこの身を度せん。大衆もろともに至心に三宝に帰依したてまつる。自ら仏に帰依したてまつる。まさに願わくば衆生と共に大道を体解して無上意を発さん。自ら法に帰依したてまつる。まさに願わくば衆生と共に深く経蔵に入りて、智慧海の如くならん。自ら僧に帰依したてまつる。まさに願わくば衆生と共に大衆を統理して一切無疑ならん」と、礼讃文を唱えるのである。つまり私たちには、神仏等すぐれた者に服従してすがる帰依の姿勢が信者の基本として求められているのである。
 三宝を信じること。喜び仰ぐ信仰心がなく神仏を信じず、自己の存在や主我性を取り出して固定し、命題を自明なものとして定立し、措定して、自己や自我そして私の殻の中に蝸牛のように閉じこもり自己を主張し、仏法の悪口を言って中傷し僧侶を誹謗する。
 仏門に入って袈裟を着けて仏道を伝える僧侶、人の師範としての僧侶の人格を中傷し、悪口を言う人たちには仏門帰依の信仰者の姿勢は見られない。それどころか、その行為の恐ろしさや罪悪性にも気づかない。
 そしること非難することによって、大切な仏教の真髄を聞思すること、仏教の諭す根本真理に恵りあうことができない。自らおごり高ぶり心は傲慢放逸であって、信仰の実りを得ることができない。
 三宝に香華や飲食等を供え、ほめたたえて敬い、教えに従って修行する精神的崇敬の態度がないため、仏に礼拝し諸の物を供えて供養し、回向することがない。宗教を不必要な害悪として唯物論的反撃を加える。時として業報を否定する。
 自業自得、人には業(行為)による報いがある。善悪の業因に応じて苦楽の果報が現れる。すべてのものを因果の法則が支配、善因には善果、悪因には悪果が必ずある。あらゆるものは因果の法則によって生滅変化する自然の法則である。
 行為における因果応報の関係であるが、因果応報の理法は存在しないと考えてそれを無視し、否定して因果撥無と考えることは無智、無明である。
 人間のなす行為、身と口と意とのなす一切のわざ、身体の動作、口でいう言葉、心に意思する考えのすべてが後に何らかの報いをまねく。潜在的な業力となって、人間的な活動が何等かの報いを招くのが因果応報だ。
 前世の所業によって現世に報いを受け、結果を生ずる原因としての行為、人間的な活動を行うことによって、一つの行為は必ず善悪苦楽の果報をもたらす。
 過去から未来へ存続し働く一種の力が業力である。業の和訓は罪と読むが、悪業・惑業も行う人間たち。身・口・意の三業そして個人業、社会的な広がりをもつ共業等、種々の業が仏教に採用され注目された。
 悪業が身を害する業火となり、行為によってまねいた必ず報いがある、無間地獄へ落ちる罪もある。人間の行為として、最も重い逆罪として次の5つの重罪がある【五逆罪】。
 1、母を殺すこと 
 2、父を殺すこと 
 3、聖者を殺すこと
 4、仏の身体を傷つけ出血させること
 5、教団の和合一致を破壊し、分裂させ、攻撃を加えること。
 5については(1)塔寺や仏像の破壊(2)正教の誹謗 (3)修行の妨害 (4)業報の否定 これらの行ってはならぬ悪い行為があげられる。
 教団を誹謗中傷し、破壊することは、父を殺す以上に重罪であると、大乗仏教を誹謗した者が楽のない、苦しみを受けることが絶え間のない無間地獄(無救)へ堕ちると語られている。無間業をつくる人たちが現代社会には大勢見られるが、無間の奈落行きについて無知、無自覚の人も多い。現代人はそういう意味では神、仏を信じないばかりでなく、無信仰者としての恐ろしい、恐るべき行為についても、気づいていないのである。
 知らぬということで怖がることもなく、おそろしさも自覚せずにいるが、やがて現代社会の悲劇に結びつく結果を招くことになるのではないかと危惧される。昔の人は仏罰を「罰があたる」と恐れ、謙虚に暮らしていた。街の中や家庭で殺人を犯す犯罪も現代の人間の行為である。人生には信仰が大切である。人命尊重救助の思想が、共に生きる社会には必要不可欠であろう。仏教の宣布には迫害がつきものである。
 法難は時として群れをなして威圧すると、経典にはそう説かれている。
 末世である現代社会に仏教が復興し、人々が神仏にそして人々に崇敬心をもって心豊かに暮らすことが出来る時、物心双方の調和ある豊かな社会生活が可能であろうが、物のみが氾濫し、心不在社会や無信仰が蔓延し増長する時、間違いなく歪んだ病理社会が実現することを、因果律は予言し警告している。 (続く)

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学校物語128千葉敬愛学園高等学校
英国留学10周年記念式典開催

レセプションで法被をプレゼント
 稲毛区穴川にある「学校法人千葉敬愛学園・敬愛学園高等学校」は、昭和28年に「千葉関東商業高等学校」としてスタート。昭和32年に「千葉工商高等学校」に改称し、平成7年に現在の校名に改称。全校生徒1056人が勉学とスポーツに励んでいる。同校では「特別進学コース」と「進学コース」、「人間科学コース」を設置。首都圏国公立大学への進学を希望する生徒のための「特別進学コース」では、徹底した少人数制で選択授業や演習授業を行う他、論理力やコミュニケーション能力などの総合的な人間力も学ぶ。難関私立大学を目指す「進学コース」では、「理系A」を除いて、文系教科と理系教科のすべてを学習するという「バランス」を重視。英語の少人数制授業や日本語の読解力にも力を入れ、英検や漢検や数検にも挑戦できる。豊かな感性と論理的思考を持つ全人的な生徒の育成を目指す。トップアスリートやリーダーになる人材を育成するための「人間科学コース」では、スポーツ活動に高い関心と意欲を持ち、自己の競技力向上を目指す運動部に所属する生徒たちが、スポーツの専門知識や高度な運動技能、体育の基礎的な理論を学ぶ。大学受験対策も充実。また、同校では、平成11年度から独自のプロジェクト「英国留学制度」を設けている。留学を希望する生徒たちは、1年生の時期に英会話を学び、英国の歴史・文化などを学習して準備。2年生の時期に1年間、英国留学を実践する。英国では、寮生活やホームステイなどを体験しながら、公立の高等学校などで学習を重ねる。帰国後は、同校の3年生に進級できる。これまで、117人の生徒が英国留学という貴重な体験をした。今年度、英国留学10周年を迎え、10月23日に記念式典が開催された(写真)。当日は、英国の学校関係者や駐日英国大使、同校の生徒、教師、保護者など約1200人が出席し、関係者の挨拶や留学制度10年間の報告、留学生の体験発表、演奏会などが盛大に行われた。【取材・浦野美智子】

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サークル紹介 健康体操「3Bクラブ」
続けることで足腰を丈夫に若々しく
サークル「健康体操・3Bクラブ」は8年ほど前に発足。千葉市女性センターのフィットネスルームで活動を継続中。会員は30代から60代までの女性15人。運動が苦手の人でも楽しくできるように、レクリエーション的要素を取り入れ、ボールなどの道具を使い、音楽に合わせるなどの工夫をしている。指導者の石掛悦子さんは「筋トレやストレッチも取入れ、無理なく長く続けることで健康維持につながる」と語った。会員は「体の芯がしっかりしてきた」、「音楽に合わせて動くことが楽しい」、「続けることで持久力もついて体が軽くなった」、「筋肉がついて、素早く歩ける」、「気持ちが若くなった」などと話した。見学自由。会員募集中。問合せTel208・0575(石掛)
【取材・浦野美智子】

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市民ガイド
千葉市美術館
国立美術館所蔵「20世紀の写真」
▼会期・11月1日(土)〜12月14日(日)▼開館時間・10:00〜18:00*金・土曜は20:00まで▼休館日・11月4日(火)12月1日(月)12月7日(日)▼観覧料・一般800円(640円)高・大生560円(450円)カッコ内は前売・団体で60歳以上の料金▼Tel221‐2311
千葉県立美術館
こどものための展覧会-海の風景-
海、漁村、浜、岬など海を題材にした作品を紹介▼会期・11月22日(土)〜1月11日*月曜休館▼開館時間・9:00〜16:30▼入場料・一般300円、高・大生150円(65歳以上・小中学生無料)▼金工の世界▼期間・11月22日(土)〜1月11日(日)香取秀真、津田信夫などの作品など鋳金・鍛金・彫金などの金工作品約45点を紹介
穴川コミュニティまつり
11月9日午前10時〜午後5時まで。カラオケ、楽器、舞踊など50以上の各種団体が日ごろの練習成果を披露。
青葉能公演
▼日時・12月7日(日)午後1時30分開演▼会場・青葉の森公園芸術文化ホールS席6,000円A席4,000円(学生は各席1,000円引)☆演目・仕舞「高砂」「弱法師」「小袖曽我」・狂言(和泉流)「長光」シテ三宅右近・能(観世流)「恋重荷(こいのおもに) 古式」シテ梅若万三郎◆問い合せ・Tel266‐3511(担当・小川)
日本語教育講演会 
▼演題・日本語を子供達に!!日教組と闘うこと16年!!▼講師・伊藤玲子(日本女性塾幹事長)▼日時・11月24日(月・祝)14:00〜16:00▼会場・千葉市民会館特別会議室(2階)JR千葉駅東口徒歩7分Tel224‐2431▼参加費・500円(先着100名締切)▼千葉県の教育を良くする会(会長・宍倉清蔵千葉市議会議員)
第44回歴史講座
☆演題・「大津事件と畠山勇子」講師・岡田幹彦氏(日本政策研究センター主任研究員)▼日時・11月22日(土)午後2時30分開演▼千葉中央コミュニティーセンター5階講習室▼会費・1000円(学生無料)主催・日本の心を育む会▼TELFAX241-6104携帯090-2532-4226(金子)。
チャペル・コンサート
▼日時・11月30日(日)午後2時開演 3時終了▼会場・もと日本基督教短期大学内 学園協会(稲毛区小深町90-3)無料:駐車多数可▼演奏・日本では数少ないボタン式アコーディオン・檜山学♪曲目・アコーディオンの名曲、賛美歌およびクリスマスソングなど▼Tel424‐0831(久米牧師)。
劇団小松玲子座第6回公演
清水邦夫作「楽屋」(一幕)▼日時・11月15日(土)午後2時、午後4時(2回公演)▼会場・千葉市美術館講堂(11階)▼入場料・前売1,500円 当日2,000円▼問い合せ・劇団小松玲子座Tel274‐2525、090-5542-9765
千葉いのちの電話コンサート
来生たかおアコースティックコンサート〜浅い夢〜゛▼日時・11月24日(月)17:00開演▼会場・習志野文化ホール★入場料・3,500円▼チケット販売・問い合せ・千葉県いのちの電話協会事務局(月〜金)Tel222‐4322、FAX227‐6911
船橋女声合唱団定期演奏会
▼11月26日(水)19:00開演▼会場・京葉銀行文化プラザ音楽ホール(旧ぱ・る・るホール)*入場料1,000円▼曲目・富山に伝わる三つの民謡、愛する歌、六つの子供の歌▼連絡先・Tel090‐4547-5245(古田邦子)
エルシエナ・マンドリン 第4回定期演奏会
▼日時・11月24日(祝)14:00開演▼場所・京葉銀行文化プラザ・音楽ホール(旧ぱるるホール)JR千葉駅徒歩3分*入場無料(未就学児の入場不可)▼曲目・東洋の印象・第2組曲、早春賦、浜辺の歌▼問合せ先・090-4912-7227(広報・浜田)
ギャラリー古島
「佐々木律子 織の世界」11月7日(金)〜17日(月)*13日休廊「太田武彦 作陶展」11月21日(金)〜26日(水)「-クラフトで彩る‐ありがとうの気持ち」11月28日(金)〜12月8日(月)*4日休廊▼問い合せ・Tel243‐3313ギャラリー古島(JR西千葉駅より1分)
昼だまり広場11月
「ジャズ演奏」▼日時・11月22日(土)12:00〜13:00▼会場・千葉市民活動センター(中央コミュニティセンター1階)入場無料▼BCアンコのわんぱく王国、千葉大学モダンジャズ研究会▼プログラム・Confermation.Fly me to the moon他▼問・Tel245‐5687(千葉市民活動センター
カルチャーセンター稲毛 生徒・教室利用者も募集!
会議・研修会にもどうぞ。ステンドグラス、マミフラワーデザイン、トールペイント、英会話、油絵、書道、ろう造花、手書き染め等。▼問い合せは・アイム設計C244・3989

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今月の人
岡本国際奨学交流財団会長 岡本 正さん 86歳
ホームセンター経営から留学生支援
国際交流で世界平和につなげたい

稲毛区にお住まいの岡本正さんは広島県出身。京都大学を卒業し、学徒出陣して生還。大学の先輩とともに千葉市内に「京葉産業(株)」を設立して石油販売業の経営に20年間携わった。
 その後、先輩とともにホームセンターの草分け的な存在である「(株)ケーヨー」を設立し、20年間チェーン店づくりに没頭。会社は上場会社になり、岡本さんは副会長に就任した。
 68歳の頃、妻から「そろそろ会社を引退して、残りの人生を考える時期。お金はお墓に持っていけないから、社会に還元しましょう」と言われて退任。友人や先輩の助言と協力で、留学生援助のための財団法人を設立することを決意し準備に着手。1992年5月、文部省管轄の財団法人「岡本国際奨学交流財団(OSF)」を設立し理事長に就任した。本部事務所を稲毛区緑町に構え、若葉区みつわ台にOSF国際学生会館(寮)を建設した。財団設立以来、アジアの多くの留学生を受け入れて支援する活動を展開している。岡本さんは「元文部省事務次官の友人からは"留学生のお世話をしてスキンシップを図り、愛情あふれる援助をしなさい"という貴重なアドバイスを受けた。心の通った暖かい交流の場・友情と信頼が育める場を提供したいと常に考えている」と語った。
 同財団では、年間20人の留学生に対して、1カ月8万円の奨学金を2年間援助。本部では、様々な相談に対応したり、日本語講座や英語講座を開いている。また、一泊バス旅行や広島の原爆祈念式典参加なども実施している。現在は息子さんに理事長をバトンタッチ、岡本さん自身は会長として仕事に携わっている。
 「留学生のほとんどが優秀で人柄も素晴らしい。帰国後、様々な分野で活躍していることが嬉しい。ノーベル賞を受賞する奨学生が誕生して欲しいと思う。運営費などの経済的な面では苦労するが、留学生支援という国際交流と親善を通して、世界平和に貢献したい」と岡本さんは語った。 【取材・浦野美智子】

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21世紀高齢社会徒然草 その2
変貌遂げる介護の現場から
有料老人ホーム敬老園 社会福祉法人うぐいす園理事長 宇野 弘之
戦後、福祉を国の施策・支柱とし、福祉の充実を目指してきたスウェーデン。そのスウェーデンにおいても国民の不満があるという。物質的充足には申し分はないのだが、物だけの充足では真の幸福感が薄く、心の豊かさが人間の本当の幸福をもたらすであろうと語られるのである。つまり人間とは何かを知る必要があるようである。
物だけの充実では人間の満足が得られぬ、人には心の軌跡がある。感謝の心をもち、人生の喜びに生きる時、充実感や本物の人生の発見があろう。感謝報恩というが、長寿者が人生の喜びに恵まれ、小学校の先生等師恩の想い出を語り感謝の言葉を述懐する。
 大切な報恩感謝の心
 祖父母、父母についても同じ思いを語る。観音様のような母にも合掌し、父の慈恩にも感謝してお育ていただいた人々のお慈悲や親心に深謝して合掌する心のおこる時、今日の命に手が合わさり思わずお蔭様で有難うと頭が下がるであろう。人間は年々歳々平等に歳をとっていく。釈尊は生老病死の人生構造を論し、一日一日を大切に生き甲斐のある人生航路を積極的にうながすが、充実した年老いた日々を形成するのは一体誰であろうか。誘導するのは誰の責任でもなく、自分自身のような気がするが、いかがであろうか。
 本当の人間の幸せは、忘我利他の心にありと論す。人々の幸福を願い、人々に功徳利益(りやく)を施して困った人々を済度すること、つまり利他行に幸せのヒントや鍵がある。利己主義、主我性、我利我利亡者で一生を終えるのは真の幸福に会えないというのであるが、いかがであろうか。
 長寿社会は負担も多い
 「高齢少子化社会」21世紀日本社会の構造を、そのように聞き及んで久しい。
お年寄りが多く、若い人が少ない社会が日本であることに間違いない。お寺への参詣者もお年寄りが多く、年々歳々皆が皆老いて老齢化を迎えている。このような日本型高齢社会の波も尚一層進む社会状況であるが、可能ならば「元気にぽっくり死ねたらね」と安楽死の夢を語る人もいる。
 認知症になり夜中に徘徊し、歩行も困難になったら家族に迷惑をかける。余裕があれば良いが、長寿には経済的負担も重くのしかかり、長生き社会も悲鳴をあげている。長寿もよいが皆頭をかかえているようにも見える。要介護状態に向けて平等に加齢するであろうことは避けて通ることが出来ない現実である。
 高まる介護ニーズ
 高齢者が増加し、施設介護を希望するニーズは高まるばかりであるが、今日の社会問題は介護ワーカーや看護師等のプロスタッフが不足し、高齢者をお世話できない状況を迎え、それが今日の日本の姿であるということである。
 他民族国家に変貌
 施設のワーカーが結婚し、家庭を持てるだけの労働賃金が得られぬというから困ったものである。
 低賃金が介護ワーカー不人気の原因であり、この事が社会全般に広く知れ渡っており、高等学校においても介護福祉士養成校への進学は少数となりつつある。それのみならず、介護の学校の閉鎖もあちらこちらに見られ淋しいばかりである。この状態がこのまま続けば、日本型高齢社会は崩壊するに違いない。
 国は自由貿易協定に基づき、インドネシア等から人材導入を推進しているが、1日5回西に向かってお祈りするイスラム教徒が介護を担い、国際結婚も30%と米国並み多民族国家に変貌する日もそう遠くない。
 すでに幼稚園には、ロシア人のお母さんとのハーフもいて国際色豊かである。今後は21世紀の日本社会において、従来の日本人だけの社会構造から、かなり変貌を遂げるだろう。
 介護資質の向上
 現在高齢者の施設では、患者のADL(日常生活動作)判定をケアマネージャーが行い、その介護計画に基づいて対人サービスや個別サービスが行われている。本当に介護を必要とする重度の、家庭では見られぬお年寄りをお世話するためには「援助技術力」が求められている。いわゆる「ケアーの質」であり、ケアワーカーの援助技術力に負うところが多い。人が人をお世話する臨床現場である。
 フリーターを介護職にという提言や、介護サポーターの育成施策も結構であるが、本当に臨床の現場の厳しさや実情が判っているのであろうかといいたくもなる。志があっても、援助技術が身についていないと素人芸の見よう見まねの介護であり、質の良い介護は望めないであろう。
 人件費70%は厳しい
 基準としては頭数人員の配置が必要でもあるが、プロの職員が育つには指導者も苦労するところであり、時間も要することである。現場は入居者がいて汗だくだくで疲労困憊(こんぱい)の日々である。施策は対症療法のような行き当たりばったりの小手先の政策であり、高齢化人材補充論のようであるが、社会構造を高齢少子化から若い人や子供の多い社会構造に変化を遂げる日本社会を構築せぬ限り、方向性として問題解決にはなり得ないのではなかろうか。「社会福祉経営論」の視点から見ると、一言に言って介護保険による施設経営は、運営が厳しい状況にあるということである。ユニットケアーの新型特養は、多額の赤字で閉鎖を余儀なくされている、誰が補填するのであろうか。
 介護老人保健施設や特別養護老人ホームなども、質の良い人材を確保するためには、人件費率70%以上という状態の経営である。民間企業では考えられないであろう。たとえ社会福祉法人とても赤字では継続できないし、健全経営論といえない状態では廃園されてしまうであろう。
 日本社会では、弛みと腐敗により驚天動地の様々な現象がおきている。社会保険庁の年金問題もその一つである。日本人の精神は弛んでだらしなくなり、「堕落論」を語らねばならぬ状況が新聞テレビ等で大きくクローズアップされている。日本人は紳士でおとなしい。
 福祉は社会政策
 高齢者・障害者・児童福祉の社会において、福祉は資本主義の欠陥を補充するものであろう。措置費でなく、介護保険と生活保護の2本立てで対応をしているのであるが、シルバービジネスとして展開する今日とても経営論としては厳しいものがあろう。「儲かっていいですね」とは、皮肉に聞こえはしないか。利益が上がらぬ、しかし赤字を出さぬ努力を必要とする状況にあろう。
 福祉は社会政策である。「父母同然の介護」を望み、「共に生きる社会」と思いやりを示して、真面目に高齢者介護や福祉実践に取り組んだとしても、施策がきちっとして、心ある人たちである奉仕的なワーカーの生活が安定し、笑顔で取り組める福祉国家でない限り、福祉実践者に苦労を押し付けることになり、現場ワーカーたちが長続きせず、質の良くない運営とならざるを得ないであろう。
 贅沢や営利を考えているわけではない。利他行としての福祉実践者の現場の声を施策に反映し、臨床の現場を良く理解した政治家の誕生がない限り、充足した福祉は望めないのではなかろうか。勉強不足を否めない臨床の現場を理解せぬ政治家が多いのも事実であろう。皆で考えねばならぬ問題であるが、改善が望まれていることに間違いない。

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花の道  川島 正仁
第8部 メキシコの危ない現実
 私は2年間の契約を終え、さらに1年の延長をしたが、それから2年後、ラサロカルデナスで流行したチフスにかかってしまった。日立造船の宿舎には上水設備がなく、回りに井戸を掘り、そこから水を供給した。しかもきちんとした下水設備ではなく、近くに下水道を掘り1q以上も離れた、さる河に流していた。
この地区にはホテルもあり、もしここから1人でも病人が出たら、すぐに感染してしまうのは、誰の目からも明らかだった。
 私は以前からこのリスクを上司の総務課長に伝えてはいたのだが、結局、何の対策も講じなかった。
 さらに悪い事に課長自身がチフスにかかり、彼はその理由を我々には伝えずに、ただ「急用な用事が出来た」とだけ言って、メキシコ市に行き、そこで治療を受けたのだった。おそらくその彼の残したチフス菌に感染してしまったのだ。私はすぐに町の病院に入院し治療を受けた。最初は抗生物質を飲むだけだったが、全く効かず、ついにはお尻からの注射と再び抗生物質を大量にとる事で10日間の入院の末、ようやく治ったのだが、結局、この時大量に飲んだ抗生物質の影響で他の良菌を殺してしまったのだ。こうなると私は全く抵抗力がなくなってしまった。

 こうして業務を続けることができなくなり、私は日立造船を退社する事になった。2年半働き課長のせいで体を壊したのが、退社する理由だが、結局5万円の退職金でおはらい箱だ。これが現地雇いの悲しいところだ。私はグアダラハラの自宅に戻ってからも体が回復せず、友人と好きなテニスもプレイしても、すぐに汗をかいて風邪を引いてしまった。あの抗生物質の大量投与によって、大事な必要な菌までも殺してしまい全く抵抗力がなくなってしまったのだ。数ヶ月たっても同じだった。そこで私は弟の暁人の友人のガジャルド医師に相談した。
 「マサヒト、それだったら、レドクソン(強力ビタミン剤)2グラムを生のオレンジジュースに入れて、毎食後飲んでみろ」
 私はそれを3ヶ月続けた。さすがドクトル、彼の言った通り、このおかげでようやく人並みに生活ができるようになった。
 退職後日立造船からは何の謝罪も連絡もない。結局私一人が貧乏くじを引いたのだ。このような経験はしない方がいい。
 今でもビタミン剤レドクソン2グラムは私の大事なスタミナ源だ。本来だったら会社がこの賠償金を支払って当然のことなのに…。私はそのおかげで会社を辞め、半年間もぶらぶらすることになってしまったのだから。 (つづく

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