152,500部発行
2006年3月8日
通巻第114号
年間郵送購読料3,000円
稲毛新聞
 発行責任者/佐藤 正成  発行/(有)稲毛新聞社 〒263-0043千葉市稲毛区小仲台2-5-2 TEL043-256-4414(代)FAX043-256-4494
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星霜録
昨年8月に台湾の李登輝前総統にお目にかかって以来、台湾の関係に深く関心を持つようになった▼台湾の多くの人々は親日家であり、中国政府のように小泉首相の靖国参拝や歴史教科書問題で反対する人はほとんどいない。今、台湾は好景気で日本に旅行する人々は年間100万人にも達している。幕張の某ホテルで開催される美浜区倫理法人会の毎週の例会に出席して見かけるのは、台湾からの団体旅行客がたくさん訪れている光景だ。問題は日本政府の台湾人の受入れは「中国人」扱いである。当然、統計的に中国からの旅行客となる。欧米では「台湾人」として受入れるのに日本は中国人だ。なぜ台湾人扱いにしないのか▼NHKのど自慢は海外では韓国、中国、南米などで開催している。台湾の多くの人々が署名まで集めてNHKに要請しているのに台湾は除外し、一度も実施されていない。政府の意向なのか、NHKまで中国に気兼ねしている▼先般台湾の陳水扁総統が「国家統一綱領」「国家統一委員会」を廃止した。その裏には台湾は独立国家であるという意思表示とも思える。中国がロシアと組んで台湾上陸作戦の軍事演習まで実施した台湾が脅威に思うのは当然であろう▼歴史的に日本と台湾は同盟国である。田中首相が中国の言いなりに一つの中国を認めた。この時から台湾と断交しているのは全く不幸である。台湾と一党独裁政権の中国は同じではない。台湾は立派な独立民主国家である。(正)

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千葉の歴史検証シリーズ43
千葉都市モノレール物語 2
なぜ、モノレールが千葉市民の"足"になったのか
 モノレールが、大都市の市民の足≠ニなり得るかどうか。千葉市がモノレール建設を計画した時点から、すでに課題となっていた。
千葉市がモノレールを計画したのは、1977年秋のこと。1983年には一部運行を開始するはず≠セった。ところが実際に運行が始まったのは1988年のこと。それもスポーツセンターと千城台駅間で、全計画のほんの一部区間だった。
 モノレールの建設については、よく「県と千葉市が対立した」と言われているが、千葉市への人口流入が昭和30年代後半から急速に伸び、県もこれに対応して、大宮団地、千城台団地、あやめ台団地、小倉台団地、東寺山団地、花見川団地、こてはし団地、さつきが丘団地、海浜ニュータウンなどを続々と建設していった。こうした人口の急激な増加による交通事故には、バス交通だけで対応できるはずがない。
 加えて、こうした人口増によって、予想より早く千葉市が100万都市となり、政令指定都市になることが、確実になってきた。
 当時の川上県知事は、県議会で質問に答えて、次のように述べている。
 「一部にモノレール問題で県と市が対立しているかのように伝えられているが、仮に考え方の相違があっても、それは対立ではない。モノレール計画は画期的な事業であり、市だけではなく、県・市のプロジェクトチームで進めていくべきものだ」
 消極的な言い方ながら対立≠ェあることを認めているのである。この時点で、川上知事の言う対立≠ニいうのはモノレールのルート問題であった。
 郊外団地への足≠確保したい県は、千城台〜都賀〜天台〜JR千葉駅〜東幸町のルート(Bルートと言った)を考えていた。
 一方、市内交通を重視する市は都町〜千葉医大〜本町〜JR千葉駅のルート(Aルートと言った)を優先することを主張した。
 もともと県には「モノレールが大都市市民の足≠ニして適当か」という、根本的な疑問があった。
 ここで、全国でモノレールを足≠ノしている都市を紹介してみよう。
 1.沖縄では平成15年度に営業を開始した「沖縄都市モノレール 」(ゆいレール)がある。区間は 那覇空港〜那覇市中心街の首里汀良町までの区間に15駅(12・9キロ)。構造は台風や塩害の恐れが多いことから、コンクリートを主体にした跨座型 を採用。2.北九州市(JR小倉駅前〜小倉南区)8・9キロ。3.大阪市(ガイドウェイ南港ポートタウン線)6・9キロ。4.神戸市(ガイドウェイ神戸新交通ポートアイランド線・JR三宮駅〜ポートアイランド)6・4キロ。5.茨城県(筑波研究学園線)1・5キロ。6.愛知県小牧市(名鉄小牧駅〜桃花台ニュータウン)7・9キロ。7.横浜市金沢八景線(JR新杉田駅〜京浜急行金沢八景駅)10キロ。7.この他、おなじみの東京港区浜松町〜羽田空港線などがあるが、100万都市≠フ市民の足≠ニして、モノレールを採用しているのは自慢?ではないが、全国広しと言えども県都≠ナは千葉市だけである。
 札幌市、仙台市、横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市、福岡市などは、いずれも「地下鉄」が市民の足≠ニなっている。
 新交通機関が課題となった時、当然論議のマトになったのは、将来の千葉市の発展を考え、モノレールでなく地下鉄にすべきだという議論だった。しかし、千葉市の方は「地下鉄では敷設に巨額の費用がかかる」という理由で、モノレールの方を選択した。
モノレールを選択したことによって、JR千葉駅とモノレール千葉駅がホームで結べなくなり、いったんJR駅を出て、モノレールの階段(エスカレーター)を上がらなければならないというへんちくりん≠ネ「100万市民の足」ができることになってしまった。モノレールを選択したのは失敗≠セったと断言していい。その裏には特定企業≠フ働きかけや政治的圧力があったという噂さもあるが、こうした最初のつまづきが、今も尾を引いて、結局、県と市が協力運営≠清算することになってしまった。
なぜ、こんな結果になったのか。それは計画のスタートから原因を遡って考えなければならない。(つづく)

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学校物語 96 千葉市立誉田中学校
文化祭を千葉県文化会館で開催
 「千葉市立誉田中学校」は昭和22年に創立した伝統のある中学校で全校663人が勉学に励んでいる。平成19年度に創立60周年記念式典を行う予定だ。 
 教育目標に「豊かな心をもち、個性豊かで、未来に向かってたくましく生きる生徒」を掲げ、「情操豊かで、ひろい心をもった生徒」「自分で課題を見つけ、学び考える生徒」「心身ともに健康で活力に満ちた生徒」の育成に努力している。
 地域には同校の卒業生が多く住んでいることもあり、積極的に学校行事に参加、地域の人たちが生徒たちを育て見守るという連帯意識が強い。
 毎年10月に実施している「ふれあいタイム」では、地域の人たちを講師に招いて様々な講座を開く。伝統的な誉田囃子の演奏や民謡、お琴、太巻き寿司、縄ない、着付け、囲碁、将棋、中国切り絵、ゲートボールなど26講座で、得意の技を生徒たちに教える。授業では教えてもらえない地域に密着した事も指導してもらえるので、地域の人たちにとっても、生徒たちとの交流は喜びとやりがいにつながって好評を得ている。
 また、今年度は文部科学省の研究指定校として、11月に行う2年生の職場体験を5日間連続で実践した。近隣のお店や消防署、郵便局、農家、スーパー、コンビニ、豆腐屋さんなどで様々な仕事を体験した。
 生徒たちにとっては厳しくつらい思いも経験したが、職場で働く人たちの生きがいやプライドを感じ取り、仕事をして生きることの素晴らしさや大切さを学び好評だった。引続き来年度からも5日間連続の職場体験を実践していく。
 毎年10月開催の文化祭を今年度は初めて、県文化会館で開催した。
生徒たちの実行委員会の運営で合唱コンクールや演劇部、吹奏楽部、学習の発表などが行われ、保護者や地域の人たちも500人ほどが観覧して盛り上がった。
 1年生の数学の授業は、週3時間は習熟度別に分かれて授業を実践し、マイペースで学習ができるように配慮している。部活では、女子の卓球部やバスケット部やテニス部、男子の剣道部などが大活躍をしている。
 【取材・浦野美智子】

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あの店この店 あなたの身体 大丈夫ですか
体のケアから心のケアまで  稲毛区小仲台の「スマイル整体」
 今回、紹介するのは稲毛区小仲台にあるスマイル整体だ。院長は中村貞満先生。
中村先生は元先端医療機器メーカーのトップセールスマンであった。そのような経歴の中村院長がなぜ転職を決意し整体師の道を選んだのか。
 かつて中村院長自身慢性腰痛で長い間悩まされていた。そんな折り、合気道の師である安達先生と出会い、その適切な治療のお陰で十年以上続いた慢性腰痛の苦痛から解放された。
 その感激から今度は「この感激を同じ悩みを持つより多くの人々に味わってもらおう」と考え、勤務の傍ら整体療術の勉学に精進した。得意先が病院関係ということもあり医師との接触が比較的多かったので、医師の疲労感の訴えを数多く耳にしたという。
 医師相手に整体修行
 その時中村院長は「少しでも苦痛が解放できれば」と自分の学んでいる整体療術をお医者さん相手に施し始めた。この対応に医師たちの評判はすこぶる良く、「お医者さんの喜びの声を聞くたびに自信が深まっていった」と中村院長は当時を振り返る。また「医師が誉めてくれるのであれば、とのその時の自信が独立開業の最大の裏づけになった」とも話す。
 スマイル整体の特徴は、骨格のゆがみを調整するだけではなく「重心調整療法」で内蔵の下垂を正して重心を調整する特殊な施術という。また、生体のエネルギーを高め体のゆがみを調整しバランスを整える事で、本来人間が誰でも持っている免疫力や血液力、自然治癒力を高め活性化させる手技療法で、決して必要以上に骨を鳴らしたり痛みを伴ったりはしない。「あなたの身体、大丈夫ですか」。この言葉は、院長が毎日口にしている言葉だ。「身体は一生もの。それを長くするも短くするも自身の心がけ次第。せっかく授かった生命ならば、長く、楽しく過ごしてもらいたいし、そのお手伝いが出来れば」と温かい笑顔で話してくれた。
 お気軽にご相談を。
健友館・スマイル整体 稲毛区小仲台7〜1〜3
 マルエツ稲毛店そば Tel256・5999

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市民ガイド
千葉県立美術館
アートコレクション▼10月9日(月)まで。近代日本洋画の先駆者、浅井忠とその師であるフォンタネージとバルビゾン派の作家たちの作品を紹介【写真】ミレー「垣根に沿って草を食む羊。。▼4月11日(火)〜5月14日(日)独特な木版の技法や効果を追求し、独自の作風を創り上げ、国画会、日本版画協会を中心に活動、国際展へも多く出品した星襄一の作品。▼4月15日(土)〜6月18日(日)本館収蔵作品の中から、新しい手法と様式をとおして多様な表現を試みた抽象的な絵画作品。▼休館日:月曜日(祝日・振替休日の場合は開館、翌日休館)▼開館時間:午前9時〜午後4時30分▼入場料金:一般¥300 高・大学生¥150。中学生以下65歳以上無料▼交通:JR京葉線・千葉都市モノレール「千葉みなと駅」から徒歩8分。C043-242-8311
自閉症・発達障害のある方への教育支援者養成講座
臨床場面で活躍する講師陣を招き、実際の場面で子供たちへの効果的な支援ができる実践的なサポーター育成を目的とした講座終了後認定証を発行▼日時・3月11日(土)3月18日(土)4月1日(土)4月22日(土)4月29日(土)5月14日(土)13時20分〜16時▼申込先・特定非営利活動法人セカンドスペースC047-322-1257(定員30名)
話し方教室生徒募集!
▼期間・4月〜9月▼場所・千葉中央コミュニテイセンター★昼=第1、3木曜15時〜17時★夜=第1、3火曜18時30分〜20時30分▼月謝・1000円・テキスト1000円▼お申し込み・千葉話し方友の会C233-5072(足利)まで。
UCCコーヒーフェスタ 地域の皆様に恒例の大奉仕!
▼ 3月11日(土)1日限り!! 10:00〜17:00(雨天決行)▼内容=レギュラーコーヒー・缶コーヒー・業務用食材・他洋菓子各種etc・品物は多数用意してありますが、売り切れの場合はご容赦ください▼稲毛新聞ご持参の方に粗品プレゼント!!*ご家族分のお品物をご用意しております▼UCC上島珈琲(株)千葉支店 (稲毛区小仲台6-8-1C287-1000)
社交ダンス会員募集
これから、ダンスを覚えたい方、全く経験のない人、この機会に是非ご参加ください。ダンスは適度な汗をかき、美容と健康、ストレス解消にとっても役立ちます。明るく親切で、ステキな男性の先生です。時間9:30〜11:30、4月6日(木)より始めます。1回1,050円 先ずはお電話でお申し込み下さい。稲毛駅西口徒歩3分C243-3888(アレマーナ)
ランチタイム・コンサート
シューベルト国際コンクールで優勝した、芸大卒のチェリスト窪田亮氏を迎えた演奏会。マリンバ=内藤好美、トランペット=酒井清志、ピアノ=笠原純子・直江弘子。曲目=サンサーンス「白鳥」、モンティー「チャルダッシュ」他▼日時/3月17日(金)12:00〜▼会場/花光 C272-8686
画廊ジュライ
第2回グループ・パレット展。メンバー15名による風景画や人物画などの油絵を約30点展示します▼会期/3月16日(木)〜21日(火)11:00〜18:00(最終日は17:00まで)▼会場/画廊ジュライ/中央区中央3-18-3 C224-4984
市民ギャラリー・いなげ
第4回いちょうの会「油彩画展」▼会期/3月14日(火)〜19日(日)9:00〜17:00▼会場・問い合せ/千葉市民ギャラリーいなげ稲毛区稲毛1-8-35 C248-8723)
ギャラリー古島・展覧会
◎「宮山加代子・木版画展」桜セレクション▼会期/3月3日(金)〜13日(月)※9日(木)休廊 ◎「内免和彦・銅細工展」銅と妖精たちの世界▼会期/3月17日(金)〜27日(月)※23日(木)休廊◎「籠展」竹・葡萄・葛・樹皮〜小林孝子・芳澤幸二▼会期/3月31日(金)〜4月10日(月)※4月6日(木)休廊▼問い合せ/ギャラリー古島・中央区春日2-25-11 TEL243-3313
カルチャーセンター稲毛 生徒・教室利用者も募集!
会議・研修会にもどうぞ。ステンドグラス、マミフラワーデザイン、トールペイント、英会話、油絵、書道、ろう造花、手書き染め等。問合せはC244・3989【設計士の住い塾】初めての家づくりプランニングから業者選び、資金計画まで▼日時・2月25日(土)午後1時〜3時▼問合せ・アイム設計C244・3989

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今月の人
民話の採集や房総のふるさと言葉の研究などに取組む
児童文学研究家・NPO法人「ふるさと文化研究会」理事長・安藤 操さん
ふるさと千葉の文化を未来に
中央区椿森にお住まいの安藤操さんは市原市出身で1936年生まれ。千葉市の小学校・中学校の教師や八千代市の大学などの教師を務め、教育委員会指導課に勤務した他、千葉市の公民館の館長も務めた。国語教育、文学、詩、読書教育の理論構築と実践などが専門で、国語教科書編集や千葉県内の民話の採集・編集、房総のふるさと言葉の研究などに取組んでいる。これまでに、「ふるさと民話」(鳩の森文庫)「千葉のむかし話・伝説・歴史ものがたり」(日本標準社)「写真集・千葉県下の昭和史」全10巻(千秋社)「房総ふるさと歳時記」(ふるさと文化研究会)など、約100冊の編著書がある。
 「常に、他人がやらない事をやりたいと考えて生きているし、いろいろな事に興味がある」と言う安藤さんは、15年ほど前に、中国・天津市に新しくできた児童図書館の蔵書不足を知り、「天津市に絵本を送る会」を作り、日本の絵本を収集して仲間と共に天津市を訪問したこともある。その時、安藤さんは児童図書館の名誉館長を委嘱された。
 その後、2年かけて約1000冊の児童図書を天津市に贈った。13年ほど前には「ふるさと文化研究会」を設立。会員と共に千葉の歴史や民族、芸術、自然風土などの研究・出版活動に熱心に取組んでいる。「ふるさと文化研究会」がNPO法人になったのは2年ほど前。昨年は、日本語と中国語の文が入った「仲よし夢の島」という童話を出版。安藤さんが編集を担当。天津市の学校や千葉市の小・中学校などに寄贈した。また、会では、生涯学習講座「千葉ふるさと文化大学」を開講。5月から翌年2月までの毎月第2金曜日の午前中、県教育会館で千葉の歴史や文化を学ぶ。現在、平成18年度第8期の受講生を募集中。受講料はテキスト代・検定料を含めて年間14,500円。受講希望者は、安藤さんの自宅あてに葉書で申し込む。「ふるさとの文化を蘇らせて、未来に橋渡しをしなければならない。地域の大事な歴史や文化をシニア世代が守り伝えなければと思う。また、日本と中国の関係を良好にしないと日本やアジアの将来は危ない。平和のために今後も日中友好の活動に力を入れたい」と安藤さんは情熱的に語った。〒260-0042中央区椿森3−6−3(安藤さん)
【取材・浦野美智子】

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花の道  川島 正仁
第2部 在メキシコ大使館勤務
「花の道」第二部連載のお知らせ
オーラ アミーゴス    川島 正仁
今度、再び稲毛新聞に「カミーノ・デ・フロール」(花の道)第二部を掲載させていただく事になりました。「花の道」の意味は、私は高校卒業の翌年19歳で南米アルゼンチンに移住しました。社会の何もわからない一青年が南米の大地で誰の助けもなく一歩、一歩、人生を歩んできました。その最初のきっかけとなったのが正しく花栽培、カーネーション作りだったのです。私にとっては人生の出発点となったわけです。戦後60年我が国日本は人間の体で例えるなら手先、足先まで完全に官僚システム(学歴社会)に包まれてしまいました。私達はこの社会の弊害を心の底でわかっていても、どうする事もできません。私の生き方が今の若者に少しでも参考になれば、真面目に一生懸命生きてきた、あかしになると思います。 

 アルゼンチン移住を振り出しに、語学を生かして南米、日本、時にはアメリカで経験をつみ、在メキシコ日本大使館に勤務した。
 そこで私が知ったことは、どんなに見事に仕事をこなし信頼を得ても、大使館員との待遇がまるで違うという事実だった。
 そんな時、たいへんショッキングな事件が起きた。ある日、運転手の一人ホルへが血相を変えて飛んできた。「セニョール川島、エミリオが死んでしまった」というのである。
 エミリオは数ヶ月前雇った雑用係である。まだ21歳の青年だが結婚もしていて子供も一人いた。その彼が死んだという。「トランキーロ アベルクエンタメ」(落ちついて話してみろ)ホルへもその詳細はよくわからないがとにかく前日の日曜日に弟も一緒に死んだという。エミリオは大使館の運転手の一人、ラウルの遠い親戚で話してみると人物もまじめで素直なので採用したわけだ。ここで人を雇う時は、長年働いている従業員のリコメンデーションが一番確実だ。大使館、特に日本大使館の仕事は比較的楽だし、二年前から武田さんが頑張って、ドルベースにしている。給料もいいので定着率が高い。したがって誰も彼もが大使館に務めたがっている。自分の紹介した人物が問題を起こせば、当然自分の身に責任がくるから用心する。私は彼らの責任者なので、武田さんから渡された香典を持って、ホルへに運転させて出かけた。メキシコの中心街レフォルマ通りを真っ直ぐ北にメキシコ州の州都、トルカ方面に向かう。チャプルテベック公園、そして大使館の公邸などが立ち並ぶ高級住宅地を通り過ぎると、ちょっとしたスラム地区に入るその当たりに、エミリオの家はあった。
 ここでの葬式は簡単なもので近所の友人、家族が集まってくるだけだ。子供を抱えて涙ぐんでいる女性が目に入った。彼女がきっとエミリオの若妻なのだろう。聞けば土曜の夜エミリオの弟の彼女の15歳の誕生パーティーがあったという。ここでは女性は15歳を迎えると一人前の女になったということで家族総出で盛大なパーティーをする。
 彼女をとりまく友人、ノービオ(恋人)はもちろん出席する。エミリオの弟は自分も当然招待されると思っていたが彼女の父親が反対したため招待されなかった。そこでエミリオを誘ってパーティーの会場におもむいたのだ。少し酒が入っていたらしい。そこで父親と口論した。その直後、父親は彼等を外に連れ出し、有無を言わせず持っていたピストルで二発、可愛そうにエミリオも巻き添えを食ってしまったのだ。父親はその場から逃走、いまだに行方がわからないという 。 アルゼンチンでもいろいろなことがあつたが、今度のことは身近に起こりショックだった。(つづく)

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