千葉市若葉区で生まれ育った冨田さんは、地元の小中学校から千葉県立千葉北高等学校、千葉工業大学へ進み、卒業後はIT系企業に就職。26歳のとき、父親が経営する(株)千葉産直サービスへ入社し家業を支えた。「健康は食から」をモットーに、産地が明確な旬の素材を原料に使い、無添加・安全性・おいしさを追求する食品メーカーだ。
当時の食品業界はBSE(狂牛病)、食中毒、表示偽装など、食を脅かす様々な問題が発生するなか、冨田さんは「食の安全がより重視される時代だからこそ正しい知識が必要」と、幅広い分野で食に関しての学びを続けていたが、その後、主力商品の原料であるイワシの不漁が深刻化するなど事業継続が厳しい状況に。
2016年、代表取締役に就任した後も、冨田さんはこの苦境に立ち向かうため、イワシ缶以外にもサバやサンマなど青魚缶で日本一を目指し「トロ缶シリーズ」の開発とブランド化に注力した。その根底には「近年、家庭での魚離れが進んでいるので、和食文化を次の世代に残せるよう、食卓に魚料理が並ぶきっかけをつくりたかった」という強い思いがあった。製造者の情熱が込められた数々の商品は、素材にこだわる食料品店に並ぶほか、自社通販サイト「産直健美」で注文を受け全国にファンを増やしている。
そして、冨田さんの新たなチャレンジが先月からスタートした。17年間かけて築いた生産者とのネットワークを活かし、作り手の思いやストーリーを伝える場所として西千葉に「FOOD STORY 〜cocorobi〜 」(フードストーリー・ココロビ)をオープン。自社製品、こだわりの野菜、厳選された日本各地の無添加商品、酒類などを販売している。「地域と作り手の心を照らす“灯り”のような存在を目指しています。心も身体もよろこぶ、おいしくて安心安全な食を提供し、みなさんに健康と幸せをお届けしたい」と冨田さん。内装に使われている自然乾燥した国内産スギやヒノキの香りが漂う店内は「居心地がいい」「また来たくなる」と来店客に好評だという。自ら店頭に立ち接客する冨田さんは「質にこだわった品揃えの中で、ぜひお気に入りの逸品を探しにお立ち寄りください」と呼びかけた。◇FOOD STORY 〜cocorobi〜(フードストーリー・ココロビ)◇JR西千葉駅から徒歩4分◇千葉市稲毛区緑町2-21-3片山第2ビル1F◇043-306-6798◇営業時間:10時〜19時◇日曜日定休◇https://www.foodstory.jp