130,000部発行
2019年5月10日
通巻第272号
年間郵送購読料3,000円
発行責任者/佐藤 正成
発行/(有)稲毛新聞社 〒263-0043千葉市稲毛区小仲台2-5-2 TEL043-256-4414(代)FAX043-256-4494
想い出の人
連載シリーズ(19)
主張 入野守雄
随筆
きさってぃ
市民ガイド
今月の人
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想い出の人
電子アコーディオンの名手だった高山禮至さんと知り合ったきっかけは、小生もアコーディオンを習っていたことから親しくなり、時々演奏を依頼したこともある。千葉市中央区にスナック「冨衣里姿亜」を経営する傍ら電子アコーディオン演奏し、お客様に親しまれていた。しかし、元気だった高山さんは2016年3月に他界された▼高山さんは6歳のころから母親と一緒に関東地区の軍隊慰問に出かけてアコーディオンで軍歌を演奏したり、地元の兵隊さんが出征する時にアコーディオンを弾き、独学でアコーディオン演奏の勉強を続けていた▼中学時代には古賀政男さんのもとに通い、アコーディオンの指導を受けた。千葉商業高校から明治大学法学部に進み、明大マンドリンクラブでアコーディオン奏者を担当し、大卒後、プロのアコーディオン奏者になった▼一時期、血管の病気で、2年間の入院生活をしたこともある。病気回復後、東京の銀巴里で岸洋子さんらが歌うシャンソンやジャズの演奏を担当。昭和35年から約5年間、ミッキーカーチスのバンドの演奏者としてジャズ喫茶や米軍基地などで演奏した▼昭和40年頃からは電子アコーディオンを弾き始め、マヒナスターズのバンドの演奏者として全国を回り、紅白歌合戦にも出演したこともある。最近はインターネットのユーチューブで高山禮至さんを検索して演歌からシャンソン、ジャズ、タンゴなど数々の名曲を聞いて高山さんを懐かしく偲んでいる。 (正)
連載シリーズ(19) 間違いだらけの痛み対策
むち打ち症について
都賀治療院 院長 藤 城 博
(4)初期は安静とドルフ使用(頭の加重軽減と運動制限)が早期治癒の決め手。
頭は意外に重いものです。4〜5s位あり、肥った人はさらに重くなります。 傷んだ軟部組織が頭を支え続けるのは過酷ですから、しばらくは頭を支える助けをしてやる必要があります。重症の場合は初期の一定期間、寝ていることが最も安静になりますし重要です。むち打ちは頚椎とその位置関係には異常のない場合が多く、その周辺の軟部組織が損傷している新鮮な怪我と認識することです。特に靭帯や筋線維に分布している毛細血管の一部が切れている可能性がありますから、レントゲン所見では異常なし、と言われて軽く見た結果、重症化していることが多々あります。 実はむち打ち症こそは、初期の安静の最も重要な疾患の1つなのです。また、靭帯や筋線維は骨よりは再生能力が弱いので、断裂した部分を動かしているとくっつきにくくなり、治癒が長引いてしまうのです。丁度治りかけたかさぶたをはがして、再び出血することを繰り返しているようなものです。しかし一般には骨折と聞けばさあ大変、とばかりにしっかり固定して安静をとりますが、捻挫や挫傷と聞けば軽くみて固定も安静もせず使い続けて、結果として治らず長期化している傾向があります。
診断で最もポピュラーに使われるレントゲン写真は主に骨しか写りませんので、軟部組織の診断に関しては極めて頼りないわけです。しかし100年以上にわたって医療に大変貢献もしてきました。
因みにレントゲン線は1895年11月8日(金)午後4時半ごろ発見されたそうですが、ドイツのヴュルツブルグ大学のウィルヘルム・コンラッド・レントゲン教授の陰極線の実験中、部屋の隅に置いてあったシアン化白金バリウムの蛍光紙が、何かの刺激を受けて光っていたことから偶然発見され、これがクルックス管の電極からガラスを透過する何かが出ていて、未知の光線という意味でX線と名付けられました。
そしてまもなく奥様の左手の写真を撮って、骨がはっきりと写っていたのが医学的応用の始まりでした。 レントゲン博士はその功績でノーベル物理学賞を受賞していますが、博士の偉いところは万人に役立ててほしいと、特許を取らなかったことです。
当時は放射線障害のことは分っていませんでしたし、それはそれで大変な役割をしたものですから、「レントゲン無くして医学なし」とまで言われました。 しかしあまりにも骨の写真がよく写るものですから、特に整形外科の医師は病気を骨と結びつけて診るくせがついてしまったのです。そしてそれ以来、レントゲンに写りにくい軟部組織は、ずーっと無視され続けて今日に至っております。そして、今でも整形外科ではレントゲンに写る骨の所見に、必要以上にこだわる傾向があり、痛みが長期化している患者さんへの原因説明に、骨や関節の変形と加齢を言いすぎる傾向があります。
ところが変形が原因だからなかなか治らないのは仕方ないですね。と指摘された慢性疼痛疾患の方たちが当院の「痛いことをしない」という原理で面白いように治っていき、しかも治癒後再びレントゲン写真を撮っても、以前と全く同じという結果です。これは治らない原因として骨の変形が絶対条件ではないという証拠です。
骨の状態を中心に診断する傾向を私は整形外科メガネと呼んでいますが、他の診療科もやむを得ないことですが、多かれ少なかれ自分の専門の眼鏡で診る傾向があります。人体の骨は約200個なのに筋肉は400個もあって人体中最大の組織ですから、もう少し軟部組織の専門家がいても良いと思います。例えば、皮膚科、内科、脳神経外科、整形外科などと同じように、「筋肉科」とか「軟部組織科」という具合です。そうすれば、むち打ち症や肩こり、頚腕症候群、腰痛等の治療に、もう少し成果が出るのではないかと思います。
また内臓はレントゲンに写りにくいので造影剤(バリウムやヨード剤、空気、炭酸ガスなど)を使っていましたが、近年軟部組織や臓器に強い超音波やX線CT,MRIなどが開発され便利になりました。従って軟部組織に弱いレントゲン的診断は参考程度にして、画像診断で得られた情報も盛り込みながら、あくまでも患者さんの「症状を主体に対処」すべきと考えます。
むち打ち症においては、加害者の代理人である保険会社が、事故発生日から一定の期間で治療終了を交渉してきますので、しばしば被害者とトラブルになっております。症状が残っていれば、遠慮せず納得行くまで治療すべきです。(続く)
主張 国民が幸せになる経済政策とは
稲毛新聞論説委員 入野 守雄
日本国民は35年前の100兆円の国債発行残高の時から、これ以上国債を発行して借金すれば、財政が破綻し国債の金利が暴騰して、円は暴落すると財務官僚が大嘘をついていた。
しかも1100兆円の政府の借金を一人当たり860万円の負債を国民が抱えていると言う大嘘もついた。既に1100兆円のうち480兆円は日銀が国民(銀行)から国債を購入したので、480兆円も国民(銀行)に返済されたので、政府(国)の借金1100兆円は620兆円である。日銀は政府の子会社で、日銀が持つ債権480兆円は連結決算だから政府は返済不要である。
残り620兆円は国民(銀行)が貸していて国民の借金でなく債権である。
政府の借金1100兆円は620兆円に減ったから絶対に破綻しない。5年国債の金利1・5%は0・05%と低下し、円は1985年1ドル250円が現在111円で暴落でなく円高である。
財務官僚は財政が破綻すると35年間も嘘を言い続けた大泥棒である。ウソは泥棒の始まりだからだ。
明治から現在まで日本国の借金は3740万倍に増え、破綻していないのに破綻すると財政再建の消費増税と緊縮財政を言い募る財務省はガン細胞である。
だから米、中、独、仏、英、韓などが経済成長したのに日本は成長出来ず、緊縮財政だから公共投資が出来ず国民の仕事を無くした。安倍首相は治山治水工事せず水害、地震で国民を死亡させた。
世界一金持ち日本国の金を国民の為に使わず、金持ちの経団連、官僚、政治家、メディアの為に使い、国民の所得を減らした自民・公明与党は国民の敵ではないだろうか。
実例が年金支給額を平成14年から平成30年までの16年間に148万1017円減らした。小泉政権4年で16万6347円減らし、7年間の安倍政権では36万3548円減らし、福田政権で94万3526円減らした。民主党も減らしたが、1百47万3421円も減らしたのが自民・公明両党である。
財務官僚や政治家は消費増税と公共投資否定がデフレになると理解できない無知。年金受給者の減額は平均150万円で、4000万人×150万円で60兆円も受給者の所得を奪った。
安倍首相は国民から奪った金をフランス、マクロン大統領と同じで大金持ちなどに配分した。
国民に金が回る減税や公共投資をせず非正規社員を増やした。介護従事者、シングルマザー、非正規社員が生活出来るように消費税を廃止し、一定額の賃金を支給する。年収1500万円以上の所得者は所得税を増税する。
証券会社、保険会社、銀行は明治から150年間も財政破綻していないのに破綻すると、財政再建の消費増税と緊縮財政に賛成した。株式、投資信託は暴落し金利はゼロになり自らの首を絞めた。
日銀が日本国債を買い取れば、政府の借金は減り、これこそが財政再建である。国債買い取りは国会が承認すれば日銀法違反ではない。物価が年間130倍に上がるインフレになれば買い取りを止めればよい。100円が102円にならないデフレではないか。
「きさってぃ」の自転車コーナー
自転車競技トラック中距離選手
日本写真判定株式会社 中村 妃智
新田祐大選手が銀メダルを獲得!
ポーランドで行われた世界選手権大会に集った選手たち
みなさんこんにちは!きさってぃーの自転車コーナーです。
今回は世界選手権での様子と世界選手権後の選手たちについてお伝えしたいと思います。
2018年〜2019年シーズンの締めくくりである世界選手権はポーランドの地でおこなわれました。
自転車競技の場合、10月から合計6戦行われるワールドカップに出場し、その合計点で競い合い、その中の上位決められた順位までの選手が出場できるのが世界選手権です。
ワールドカップやアジア選手権に出場し、入賞するとオリンピックポイントというものが加算されていきます。
この東京オリンピックに出場するために必要になってくるオリンピックポイントですが、世界選手権はなんとワールドカップの倍点与えられます。ということはとても重要なレースとなり、どのチームもこの世界選手権に向けて身体を仕上げてきます。
さて、今回の日本代表チームはというと…なんと!ケイリンで新田祐大選手が銀メダルを獲得しました!これにて日本チームのケイリン種目は世界ランク1位になりました。私たちチームパシュートは11位。1が一つ多い!
残る1シーズン、新田選手を筆頭に日本代表チーム一丸となって頑張っていきたいと思います!さて、世界選手権を最後に自転車競技トラックはオフシーズンとなります。世界選手権が終了してすぐに選手によりますが大体10日〜2週間程の休養をとります。コーチには自転車は部屋の隅に置いておけと言われます(笑)
心身共に限界まで追い込んできた選手たちはそれぞれにオフを満喫…も束の間、オフシーズンのトレーニングの始まりです。次のシーズンに向けて新たにステップアップできるよう心身共に鍛えます!
市民ガイド
千葉市美術館
ピーター・ドラッカー・コレクション水墨画名品展「マネジメントの父」と讃えられた経営学者ピーター・F・ドラッカーが愛し収集した日本絵画197点すべてが千葉美術館に寄託されたことを記念し、本展ではそのうち約50点をご紹介します。ドラッガーコレクションは希少な室町時代の水墨画をメインに据えた他に類を見ない大変個性的なものです。その中でも本コレクション以外には作例が見いだせない、優れた室町時代の水墨画家たちの作品が多く含まれているのが特徴です。▼会期・4月13日(土)〜5月26日(日)▼開館時間・10時〜18時・金・土曜日は20時まで▼観覧料一般200円、大学生150円*小中学生、県内在住の65歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料。▼tel043-221-2311
千葉県立美術館
富取風堂-洗練の素朴-
富取風堂は1892年東京日本橋に生まれ松本楓湖の安雅堂塾で日本画を習ったのち今村紫紅、速水御舟らと新時代の芸術を作り出すことを標榜した赤曜会を結成。解散後は、主に院展を舞台に作品を発表、評議員、監事を歴任します。その後市川に移り住み千葉県美術界の創設に参加するなど千葉県の文化振興に寄与し1967年に千葉県の文化功労者に選ばれました。本展では、当館所蔵の作品を主題別に、風物、風景、
魚、花、鳥、動物のセクションに分けて約30点展示、更にスケッ
チブックも展示し、画家の実像に迫ります。▼会期・4月20日〜7月7日(日)*休館日毎週月曜日▼開館時間・9時〜16時30分▼入場料・一般300円、高校大学生150円、中学生以下・65歳以上の方・障害者手帳をお持ちの方と介護者1名は無料。なお6月15日(千葉県民の日)は入場無料▼問い合わせ・tel043-242-8311
憲法講演会
「憲法という希望」を語る▼講師・首都大学東京教授 木村草太氏▼日時・5月12日(日)14時▼会場・美浜文化ホール(美浜区真砂5-15-2tel043-270-5619)▼内容・新進気鋭の憲法学者が憲法の歴史・理念、立憲主義、憲法改正問題を分かりやすく解説し人権条項を活かすこと、地方自治、選択的夫婦別姓問題など、現実の社会問題に対して憲法をどのように使い活かすかを語ります▼主催・「憲法という希望」を語る講演会実行委員会▼資料代・500円
車椅子フォークダンス養成講座
車椅子ダンスでボランティアをしませんか(講習費は無料です)▼日時・5月28日(火)13時〜17時▼場所・千葉県障害者スポーツ・レクリエーションセンター(稲毛区天台6-5-1)▼費用・2,000円(テキスト・DVD教材費)1,000円(入会金及び年会費)合計3,000円▼入会者・毎月ボランティアで老人ホーム・障害者施設訪問・各種イベントに参加、ご都合の良い時に参加をして下さい。養成講座修了者にはインストラクター資格を差し上げます(但し年会費納入会員の方)▼募集締め切り・5月21日*募集人員20名▼主催者・NPO法人車椅子レクダンス協会千葉市支部▼申し込み・問い合わせ・車椅子レクダンス協会千葉市支部・衣笠誠・美浜区真砂2-15-1-1312電話043-278-7108
第76回歴史講座
▼日時・5月18日(土)午後2時〜▼会場・千葉市生涯学習センターB1小ホール▼演題・日本を救った占守島の戦い(ソ連軍の北海道占領を阻止した日本軍)▼講師・岡田幹彦氏(日本政策研究センター主任研究員)▼会費・1000円(学生無料)▼主催・日本の心を育む会(歴史講座担当・金子一之)▼問い合わせ090-2532-4226
八神純子コンサート
キミの街へTryAngl▼日時・5月25日(土)開演16時▼会場・青葉の森公園芸術文化ホール☆予定曲♪思い出は美しすぎて♪みずいろの雨♪約束ほか☆ピアノ・宮本貴奈▼入場料・全席指定SS席5,500円、S席5,000円、A席4,500円、B席4,000円▼主催・お問い合わせ・青葉の森公園芸術文化ホールtel043-266-3511
ゼクスト・ブラスアンサンブル 〜ラッパとタイコのコンサート〜
▼日時・6月9日(日)11時開演
▼会場・青葉の森公園芸術文化ホール▼入場料・(全席自由)当日・一般1,500円、18歳以下800円、6歳未満無料。前売り・一般1,200円、18歳以下500円☆予定曲♪ウイリアムテル序曲♪トランペツト吹きの休日♪シング・シング・シング♪夢を叶えてドラえもん♪となりのトトロメドレーほか。
ギャラリー古島
「第5回サークル墨の樹書作展」墨樹会・グループ墨の樹5月10日(金)〜5月13日(月)「ログゥ展The20th」5月17日(金)〜5月22日(水)「安藤破竹展」(書)5月24日(金)〜5月29日(水)「ペーパーアート展」5月31日(金)〜6月5日(水)▼問い合わせ・tel043-243-3313(ギャラリー古島)
今月の人
NPO法人千葉こども家庭支援センター理事長 杉本景子(40)
不登校から復帰までを見守る
自分のペースで学べるフリースクール
千葉市中央区新宿緑道沿いのビルの4階に、フリースクール・ペガサスは存在する。
理事長である杉本景子さんは、3人の子ども(高3、高2、中2)を持つ母親であるが、チャイルドコーチングアドバイザー・上級心理カウンセラー・保護司・元厚生労働技官・千葉市養護教育センター非常勤職員という精神面でのプロフェッショナルである。この肩書きのため、普段から相談されることが多く、カウンセラーの資格を取得して3年前に相談業務が主で、個別学習支援の場、ペガサスを設けた。相談内容に不登校児を抱える親からの悲痛な叫びが多かったことから、相談だけ受けても受け入れる場が無いことは、半分しか役目が果たせていないと感じ、2年前に「フリースクールペガサス」立ち上げ、1年前に「NPO法人千葉こども家庭支援センター」を設立した。ペガサスは、学校に行けなくなった子どもの「一時的受け入れ」であり、学校生活に戻すのが目標である。3月は中学生まで不登校だった8名全員が高校入試に合格し、新たな学校生活を過ごしている。学校長を定年退職した先生が学力面をサポートし、教育を重視しているため、学力を身につけたことで自信を持って次のステップへ送り出すことができた。また、ペガサスに通ったことは、学校でも出席とされており、学校の先生が出向くこともある。子どもにとっては、学校が唯一の社会とのつながりであり、学校を嫌いな子どもはほとんど居ないと杉本理事長は語る。ただ、子供同士が未熟な存在であり、残酷な刃を向けてわが身を守ってしまう。「学校に行けなくなる子は、何も悪いことをしていない!だから救うんだ!」が、杉本理事長の根底にある。
現在の問題としては、学校の出席とみなされ、学校から先生が出向いてくれても、市などからの助成制度は無く、子どもたちのお月謝のみで家賃と施設管理費を賄っており、杉本理事長と元学校長の報酬は払えていないのが現状だ。「『自分がやらなければ!』の一心で設立しても、このままでは、優しい繊細な子どもたちの行き場は危ういことになる」と杉本理事長は危惧する。自分にしかできない使命であることを実践し、実際に成果を上げている現実を、現代社会に必要な場所だと認識し、支援していただくことが、今後も存続し続ける鍵になると感じた。 【取材:水元富美子】
随筆 初恋物語り
葉桜を仰ぎみていたら、空の青さが目にしみた。
風もない。穏やかな一日だった。もうすぐゴールデンウイークがくる。
ああ、儀ちゃんが生きていたら、絶対に養老渓谷の滝見苑にいっただろうに…と思う。本当に儀ちゃんは養老渓谷が好きだった。
最初に訪れたきっかけは、アメリカで暮らしている長女一家が夏休みにやって来た時、まだ孫達が小さかったので、川遊びをさせたいと思い養老渓谷の宿をとったのだった。孫は三人になっていた。
小学校一年生の長男と幼稚園生の女の子、三歳の末っ子が男の子だった。
アメリカうまれの孫達は、英語の方が日本語より上手。皆元気でいたずらっ子で日頃儀ちゃんと二人だけの暮らしだから、まるで台風が来たような気がした。でも養老渓谷行きは大成功で、子供達は川遊びをとても喜んだ。
でも、この宿に来て一番喜んだのは儀ちゃんかもしれない。宿に到着しお部屋に案内され、女将さんがあいさつに来て下さった。
中年の色白のふっくらした面立ちのきれいな女将さんで涼しげな着物姿で丁寧に挨拶して下さった。
女将さんが部屋を出たとたんに儀ちゃんが言った。「お母さん、ここの女将さん、あのさあ…あの俺の初恋の人にそっくりじゃない?」と、儀ちゃんの初恋の人は、儀ちゃんのアルバムで何度も見せられている。 セーラー服を着たオカッパの少女の写真だ。儀ちゃんより一つ年下で当時彼女は佐原高女の一年生だったそうだ。
あの時代は男女が並んで歩いていても文句を言われる世の中だったとか…儀ちゃんは一方的に憧れて戦争に行く時に無理やり写真をもらい、御守護りにしていたようだ。
幸いにも戦死せず故郷に帰ってきた時にアルバムに貼って大切に大切にしているのだそうだ。
私は「丸顔のところは似ているけど、そんなにそっくりだとは思わないけど」と、正直に言った。
「いや、似ている、そっくりだ」儀ちゃんは一人喜んでいた。七十過ぎてなにが初恋よ、と私はおかしかったけど口には出さずにいる。三日間泊まったのだけれど、儀ちゃんは女将さんの姿を見ると、身体が硬直状態になった。
おかしさを通り越して、私は何十年前初恋の人に似ている人に会っただけでこんなに感激するのか?男って女より純情に出来てるんだなあーとつくづく感心してしまった。
でも考えてみれば、青春時代を戦争一色にいろどられ、そして自分も戦争にいき、まして特攻隊員に選ばれ、国に命をささげるだけを目的として生きてきた彼にとって、その初恋の思い出は忘れきれない貴重な思い出になっているのかもしれないなあと感じるようになっていた。
滝見苑の女将さんはじめ、皆さんよくして下さったので、娘夫婦や孫達も大喜び、楽しい休日を過ごしたのだった。それから月日が流れて年末が来た。
お正月の何日かを「滝見苑に行ってゆっくり過ごそう」と儀ちゃんが提案する。私にとってそんな楽な事はないので、すぐ賛成した。
滝見苑の女将さんに、にこやかに迎えられ儀ちゃんはニコニコしてお正月を過ごした。私は結婚以来、こんなに機嫌のいい儀ちゃんを初めて見た気がしていた。
それからというもの連休があると滝見苑に行く様になる。銀行の秘書室さんは「どうして滝見苑ばかり行くのでしょう」と不思議がっていた。滝見苑の富澤会長ご夫妻とは、今でも仲良くして頂いている。仕事、仕事に追いかけられていた儀ちゃんに、いい一刻があった事は嬉しい。
■ひと味違う地元のリフォーム店
■赤鶏と長ネギ料理の店「ねぎねぎ」
■誤嚥性肺炎と訪問歯科診療
■吉成庸子作品朗読と歌の会
■中村美律子歌謡ショー
■論壇 上田真弓
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